DX/ITツール導入/デジタル化の課題に関する座談会
開催日:2023年2月16日(木) 10:30~12:00
参加者
常務取締役
小谷 武司 様
代表取締役社長
齋藤 正浩 様
経営管理部 部長
仁木 博之 様
営業統括部 企画推進課 課長
森田 光彦 様
代表取締役社長
山本 祐司 様
株式会社ニッショー
鈴木 伸哉 様
株式会社スマサポ
花畑 友香 様
WealthPark株式会社
石村 裕樹 様
目次
元々は“ニューノーマルワーキンググループ”という前身の会があり、そこから各社のデジタル化について共有していただいておりました。今年は更に深く考えていくため“ITソリューションワーキンググループ”と名称を変更し、「ITで課題を解決していく」、「ITの課題を解決していく」という2つの目的を追求していくために活動を開始しました。
昨年、日管協の各会員様からアンケートに回答をいただいたのですが、回答を拝見すると「ITの課題を解決」しているのがこちらにいらっしゃる皆さまだと感じ本日の会を企画致しました。皆さまから様々なお話を伺い、日管協ITソリューションワーキンググループHP内にて、これまで解決されてきた中でのご苦労や解決へのポイント、考え方など、まだまだ手つかずの企業様へ情報還元していければと思っております。テーマは多いのですが、ポイントとなる部分があればそちらを深堀りしながら進めたいと思います。またご参加いただいた皆さまの間でも、深堀したい内容があればぜひご意見をいただければと思います。
・朝日不動産株式会社 小谷武司さん(以下 小谷さん)
「弊社は富山県にあり、創業54年目になります。管理戸数は11,700戸を超えたところで、北陸地方と3年前に東京にも事業所を立ち上げまして現在は3事業所となっております。私も東京の事業所に行ったりしておりますが、やはり東京と地方とではITの状況もかなり違うなと感じております。富山の方では電子契約を導入し、東京でも管理戸数が増えてきたので導入を進めようと思っています。本日は色々なお話を伺えればと思いますのでよろしくお願いいたします。」
・プロパティワコー株式会社 齋藤正浩さん(以下 齋藤さん)
「大分県大分市を中心に賃貸仲介店舗が3店舗、管理戸数が2,000戸強の会社です。従業員が私を入れて24名という中小零細企業の代表として、苦労したことや困っていることを中心にお話しできたらと思います。」
・株式会社ハウスプロメイン 仁木博之さん(以下 仁木さん)
「弊社は色々なシステムをTry&Errorで入れているんですけども、やはり課題となるのはそれを扱う人の部分だと感じておりまして、本日この場で色々と勉強させていただけたらと思っております。管理戸数4,500戸前後、社員数40名ほどの兵庫県、阪神間エリアをメインとしている会社となります。」
・株式会社ハウスプロメイン 森田光彦さん(以下 森田さん)
「弊社は昭和56年創業、今年で40期となります。設立当初から"システム管理”をうたっているんですが、現在DXが進んできましてここ5年ほどでかなり社内変革が進んでいると感じております。その中で多々課題も出てきておりますので、本日は色々とご意見など伺えたらと思っております。」
・有限会社ヤマモト地所 山本祐司さん(以下 山本さん)
「弊社は四国の左下、高知県四万十市で管理戸数約724戸、社員数18名の会社となります。よろしくお願いいたします。」
【サポーター】
部会長:株式会社ニッショー 鈴木伸哉さん(以下 鈴木さん)
「愛知、岐阜、三重で展開しております。管理戸数は91,000戸、社員数は920名ほどとなります。DXは思った様に進んでおらず、まさに今プロジェクトを立ち上げて進めているところです。本日皆さまのお話を聞いて勉強させていただき、少しでも社員の負担を減らしていけたらと考えております。」
副部会長:株式会社スマサポ 花畑友香さん(以下 花畑さん)
「ISWGのメンバーとしていつもアンケートを取らせていただいたりしていますが、実は弊社自身もDXという点ではまだまだ課題があると感じています。本日はサポーターという立場ですが、我々こそ勉強させていただけたらと思っております。」
【司会進行】
副部会長:WealthPark株式会社 石村裕樹さん(以下 石村さん)
「ITの導入などはここ2~3年の話だと思いますので、課題を解決した、ということだけでなく、こんなことがうまくいっていない、こんなことが課題としてある、なども是非赤裸々にお話しいただけたらと思います。」
鈴木さん アンケート結果からも「経営者側、従業員側双方に課題があるのではないかと感じております。現場が課題を感じていても、トップと意思疎通が図れていないと動くに動けない状態になってしまっていると思います。「トップ」、「マネージャー」、「現場」と、どのように目線合わせをしていくのか、この辺りも本日ヒントとなっていくと思います。」
小谷さん 「弊社では毎期、代表から直接ビジョンの話をする場、また書面で共有する機会を設けています。弊社の顧客は大家様(家主様)であるという点を念頭に置いて、いかに賃貸経営の目的と達成に向けて弊社がお手伝いできるかという点が主となっています。その中でのDXとは、大家様へのサービス品質UP、生産性の向上がDXのビジョンとなっております。」
仁木さん 「現場では、新しいことに取り組みたくても取り組めない、DXを進めている中でも目先の業務に追われて、新しいことに取り組める余裕がない状況にあります。弊社の代表もそれを見ており、ただ経営者観点では売上を増やしたい、管理戸数を増やしたいという目的があり、それらをマッチングさせるために業務の棚卸を進めています。弊社の経営理念が“社員とその家族の幸せをつかみクライアントに幸せを提供する”という理念があるのですが、それを実現すべく、社内外で競争での優位性を保つためにも、社員の幸せを最優先に進めている状況です。」
森田さん 「現場目線で話しますと、業務効率化を先に進めるべきなのか、新しいことを進めるべきなのかという点がありますが、個人的には業務の効率化があってこそ新しい次のことを進められるのかなと思っています。そのあたりも本日皆さまのご意見を伺えたらと思っています。」
山本さん 「私自身はビジョンを伝えることができていないと思います。一年ほど前の経営計画発表会で、DXというのは“楽に仕事をして早く帰る”ためにある、“もし休んでも誰かに任せることができる”ものだ、利益を上げるためだけにやるものではない、ただ続けていれば結果として利益が出るものだと話しました。弊社にとってのDXとはこういうことなのかなと考えています。」
齋藤さん 「発信者として経営者側が考えることと、受け取り手として中間管理職の方に自身の言葉で語ってもらっていることが、課題感として微妙に違うなと感じます。さらにそれを最前線のメンバーにどう伝えるか、たとえ経営計画発表会で話したとしても覚えていなかったりします。ただそれを言語化しておくのは大事だと思っています。そこで「DX化を推進する」というテーマを私のポジションではいつまでにどう実行する、とそれぞれの解釈で言語化し、評価項目として共有しています。最初は、ぼんやりとしたイメージで「結婚や出産でキャリアを中断せざるを得ない女性の仕事を、家庭と両立しながら活躍できるように変える」というテーマでスタートしました。DXに多少の効果を感じてきた頃には「お客様との時間をもっと内容のある時間にしよう」となり、資格の勉強を始める者、今までできなかったサービスに挑戦しようというアイデアなど、個々の解釈で変化は多様性を持って拡がっています。 最近よく言うのは、とかく裏方として捉えられがちなデスクワーク(事務職)の人たちの売上貢献度を可視化し、胸を張ってMVPレースに参加してもらえるようにしよう、ということです。
花畑さん 「伝える頻度や浸透度など、どんな場でどのようにされているのでしょうか?」
鈴木さん 「自分自身もマネージャーという立場として社長や役員などと話す機会も多いですが、どちらの課題感や気持ちも理解できるので、やはり中間でお互いの理念が分かる人材が一人チューニングできるとスムーズに回せるのかなと感じました。そういった人材をどう育てるのか、もっと深堀りしていきたいですね。」
石村さん 「今のお話をふまえてまとめると、どこの課題にフォーカスするのかということと、どう浸透させていくのかという大きな二つの論点があったかと思います。小谷さんのお話ではオーナー様により強くフォーカスされている印象があり、一方で山本さん、齋藤さん、仁木さん、森田さんのお話では従業員により強くフォーカスされているという印象を受けましたが、ただこれは分断されている話ではなく、またどちらが良い悪いでもなく、どちらにフォーカスをして回っているかというお話だと思います。これまでの会社の歴史と、今の従業員の方々の働き方を踏まえたら経営者としてどちらに重きを置くのかという話だということですね。どう浸透させているかという点については、手段としては経営計画発表会での発表、また手元で確認できるように残すなどし、その際に自分で考える思考を残すためにある会社では少し粒度を粗めにしたり、一方では細かく設定するところもあったりするのではないかと思います。そのあたり各企業様でどのように行なっているかなど、伺えたらと思いました。」
齋藤さん 「石村さんが仰った通りなのですが、どの段階でどういう課題を解決するためにDXを手段として用いようと決心したのかということについては、やはり辞めてほしくないというのがありましたね。できる人ほど多くの業務を抱えてしまうのですが、周りが手伝おうにもその人しかできない、ということがあります。またそういった人ほどこのままではダメだいうのも見えてくるのですが、小さい会社ほどさらに上からも下からも業務が集中し、その人しかできないクローズの仕事になってしまって結果的に辞めてしまう、そういったことを防ぎたいからこそ従業員にフォーカスするわけです。先ずはそれぞれが困っていることをやっていこう、今思えば、業務が一極集中しないように、負担が一人に集中しないようにしないと、仕事ができる人から潰れていっちゃうと危機感を感じたのがDX化に取組むきっかけだったかもしれません。未来像が、というよりは先ず目の前の部分からでしたね。」
鈴木さん 「本音トークをありがとうございます。経営者の方からすると確かに、個人に負担かかっているなと感じられるかもしれないですし、ハウスプロメインのお二方などは「自分に宿題が多くないか?」と思っているのではないかと感じましたので結構本質的な話だなと思いました。」
森田さん 「社長から直接聞いた話ではないのですが、経営層は直接オーナー様と接するわけではなく窓口となるのが従業員、現場の担当者であること、そうなった時に経営層としては先ず従業員のことを考えよう、そしてその従業員が現場のオーナー様に落とし込んでいってほしいということでシステムがあるということですね。仰っていた通り、どちらを表現するかというところではありますが、最終的にはオーナー様、クライアントを大事にするというのが伝わってきているかなと思いました。」
小谷さん 「どう浸透させているかという点ですと、各社様色々なメッセージツールであったりリアルであったりすると思いますが、弊社では朝礼でいつも“ビジョン・達成・競争力”を唱和しています。朝礼の場はどちらかというと習慣化させるという意味合いですが、浸透させるということではいかに経営陣と幹部、スタッフとをうまく巻き込んでいくかということだと思います。弊社では社内研修勉強会やOJTがありますが、組織体制の作り方がメッセージでもあるのかなと思っています。弊社はまだ経営者や幹部からのトップダウンの方が多いのかなという気質ではありますが、オーナー様か従業員かどちらにフォーカスかと言えば従業員だと思います。ただどちらにしてもDXを進めるうえでメリット、デメリットはある、外側、内側でそれらも異なってくるのではないかと思います。お客様にとっては利便性がメリットですし、従業員に対してはコスト、時間、利益など生産性、効率が上がるという点だと思いますがそれを如何に理解して進めていくかというのが重要かなと感じています。弊社ではどちらかといえば出来上がったものよりもとりあえずやってみようというスタイルが強いので日々改善、変更して行っていますね。」
仁木さん 「どう浸透させているかという点では、毎月の幹部会で先ず経営層の思いを幹部メンバーに共有しています。経営者から売上を上げなさい、管理戸数を増やしなさいと社員に言っても何か行動に変化が生まれるわけではないので、先ず幹部メンバーが言語変換して、社員のためにもなる、キャリアに繋がる、ということを幹部の言葉で発信して社員に納得してもらうようにしています。その中で納得してもらうツールとして評価制度であったり、月1回の1ON1(ワンオンワン)、キャリア面談のような形をとりながらコミュニケーションを図り経営者の思いを伝えるようにはしています。そこで成長することに喜びを感じてもらうことで、社員の幸せの最大化に繋がり会社と社員をWIN-WINにすることで次のフェーズとして大家様も幸せにしていこうというスタイルでやっています。また社内報で月1回松本からのメッセージを発信するようにもしています。」
山本さん 「私が言いたいことを齋藤さんが数段階レベルアップしてお話ししてくださいました。そのまま一回自分にインストールしようと思いながら聞いていました。」
石村さん 「今回は二つの軸でお話ができたかなと思います。課題にフォーカスするところはどう浸透させるのか、また課題に関しては外側と内側があり、経営者の方が感じる課題の重きの置き方、従業員の方が感じる課題の実感のところが交差していると思います。どう浸透させるかというところでは手段と粒度の話、これをまとめたうえで経営者の方から従業員へどう伝えるのか、それについては経営計画発表会や1ON1などが挙げられたのかと思っております。従業員という点はさらに深堀していく必要があるかなと思いますので別のトピックスでもまたお話ができればと思います。」
石村さん 「人材育成については、「社内の推進体制とサポート体制」、「人材育成と確保」という2軸の観点でアンケートを取っております。今回一番顕著に課題が大きかったのは“導入検討や業務改革についてチームを作り行動していきたいが、そこに割り当てられる人員がいない”というのが6割ですね。ここがもう答えなのかなと思っておりまして、日々忙しい中でDXプロジェクトだ、DX推進室だの作れない。アンケート回答者分布でもある通り、大半が50名以下の企業様です。100~500名規模になるとDX推進室や情報システム室など作れるものの、1~50名規模の会社では現業務がある中でどう推進していくかというところなので基本的にそこに人が当てられないというのが57%という答えなのかなと思いました。ここで一人に負荷がかかってしまって辞めてしまう、その穴を埋めるために他の方々が分担してさらに負荷がかかる、良くないスパイラルになってしまいます。なので時に経営者の方々はトップダウンで進めることも必要なのかなと感じます。辞めたら確保すればいいとも思われますが、そもそも専門の人員の確保ができない。仲介・管理とDX人材のキャリアパスがそもそも違うので採用フィットがなく確保できない現状があります。ITリテラシーの差など、このデジタル化の中で多い課題なのかなと思います。」
鈴木さん 「齋藤社長も仰っていましたが、一人に負荷がかかり辞めてしまうということもありますが、ハウスプロメインさんのように「1ON1でフォローしていく」っていうのは、業務負荷をうまく洗い出すためのツールとしてはいいのかなと思いました。お互いの良いところや成果を洗い出せるとうまく回るというのをヒントとして会員の皆さまにフィードバックしていけるようなものができそうだなと感じました。」
小谷さん 「弊社の人材育成については、社内研修会と1ON1は弊社でも行っています。評価制度で言うと、自己申告型の評価制度を実施しているのでどちらかというと創出型ですね。アンケートで書いた内容を踏まえて弊社の状況を言うと、やはり人についてはすごく課題が多くて、“6割がやりたいんだけどもできていない”と回答されていましたがうちもその一社だなと思っております。事業規模のお話もありましたが、やはり人材の確保は非常に難しいなと感じています。10年ほど前から新卒採用を行なっていますがそこから育てていくのは非常に難しく、また今DXを進めていくうえで作業をする人、つまり専門性がある人だと思いますが一方ではDXを企画できる方については業界の慣習などを理解していること、指示命令できる力、発想力が問われるのでその両輪での人材確保が必要です。それが確保できないのであればある程度自動化したり、アウトソース化せざるを得ない感じかなと思っています。人に負担がかかるという点では、以前まで262の法則などと言われていましたがここがもう崩れてしまっていて、その要因はまさに今言われている働き方改革、ITもしくはDX化の影響が大きいのかなと思っています。人に負担がかかると当然ミスもあり、課題解決していくうえでの改善の繰り返し、ここに人材が現状かかっているんだろうなと感じました。」
仁木さん 「ITリテラシーの差と業務過多、旧来の価値観から脱却のできない社員の対応が課題としてあります。弊社では1ON1など行なっていますが、キャリアパスの明示がうまくできていないこともあり社員自らがキャリアを構築できる環境の実現には至っていません。会社が何をしてほしいかということと、社員が何をしたいかということを深く重ねていくことがこれから必要だなと痛感しております。その中でその社員のミッションや役割、責任を自ら考えさせることができれば、もう少し協力してくれる社員も増えるのではないかと思います。代表は全社員の能力を底上げしてほしいという思いはありますが、成長意欲の高い社員の幸せを最大化するのが私の立場で考えるところではあります。成長意欲の低い社員に対して、どのような手段が最適なのか?ということを是非伺えればと思います。」
森田さん 「いわゆるITツールと言われるものが人材の底上げや業務の平準化に一役かっていると思っています。そういうのを使えればある程度業務がならされていき属人化している部分が排除されて平均的に底上げを図っていけるのではないかと考えていますが、そのITツールを人的な部分でうまく扱えないというのがやはり課題として挙がってくるかなと思います。どうやって人を育成しITアレルギーを排除していけるかが重要だと思います。小谷さんも仰っていましたが、業務を理解し、なおかつDX的な思考がある人というのがやはり必要ですね。ITリテラシーがあっても業務を理解していないとDXはうまくいかないので、そのあたりのバランスを取りつつキャリアパスを考えていく必要があるというのが目下の課題かなと思っています。」
山本さん 「ITリテラシーでいうと特に課題を感じてはおらず、DXはやっていこう、やって当然という雰囲気なので強制するということはないのですが、退職などはどうしてもあるのでそこが課題ですね。ただ、うちの会社の規模で求められるDXというのはそこまで難解ではないのかなと思っています。なのでITリテラシーなどでつまずくということはないかなということですね。」
齋藤さん
「今日、中間管理職の立場でいらっしゃる皆さまの理解度がすごいなと思いながら聞いていました。弊社にはそういった言語化できる人材がおらず、ITを専門でできる人材を求めれば、今度はまたその人しかできないとなってしまう。社歴の長い社員に重要な仕事を任せざるを得ず、その人たちは従来のやり方でないと心配だというのがあると思います。弊社でも数年前まで、ある特定の社員でないと送金明細が作れなかったのですが、そういった専門的な仕事もなくす、あるいは分解することでみんなができる仕事にするべきだと思います。一例を挙げると、長年経理一本で勤めてきた社員が病気で長期療養せざるを得なかった間に、会計事務所の協力を得ながら管理ソフトと会計ソフトをデータ連動させ会計ソフトの入力業務そのものがなくなりました。人に張り付いた専門性の高い仕事はその人でなければできないから効率が上がらないと思い込んでいましたが、ITツールを活用することで分解して専門性をなくしたり業務そのものをなくすこともできるということを実感しました。
ITツールの活用で問題解決できるのであれば、トップダウンででも導入を進めていくべきだと思います。今弊社でDXに関するリーダー的存在は27歳の女性社員ですが、配置転換でうまく芽が出てDXの旗振り役として頑張ってくれています。特に専門性があるわけではなく“広く業務を理解するのが早い”のでできているというのが一番の強みです。メンター側が実現したいことをいかにさっと理解して拾ってくれるか、専門性はなくてもそれができればいいのかなとも思います。ツールを入れることで、今ある業務のどこがどういった手順に変わるのか等、すぐに理解して取り入れてくれる人材のほうが、会社の規模的には合っているのではと考えています。プロジェクト進捗のスピード感の調整のみ私の方で行なっているような感じですね。」
鈴木さん 「よいお話を伺うことができました。齋藤社長のお話にありましたが、会社の規模感というのはあるとは思いますが、その企業ごとに合った求められる人材レベルがあり、またITアレルギーがどれだけあるのかもなかなか洗い出せていないのではないかと思いました。今回のワーキンググループの中では、専門性の高い業務を分解していき平準化していくということと、この企業の規模感であれば求められるスペックはこのレベルであり、これ以上はオーバースペックであるなどの人材確保においてレベル感で分けて考えるということ、さらにベンダー側などで持っているスキルで補える部分もあるし、それを咀嚼して理解できるレベルの人材さえいればいいのであれば、研修などで育成していくことも可能なのではないかと考えました。そういったコンテンツをこのワーキンググループで提供していくこともできるのではと思いましたので、引き続き別の機会を通じて知見や考えをお借りできればと感じました。」
花畑さん 「今ITベンダー側にいる立場ですが、当初スマサポに入った時に上司に言われたこととしてはITの細かいところまで知る必要はない、全体感をざっくりと理解することが必要ということでした。そもそもITリテラシーとは何か、どんな知識、スキルが必要なのかをしっかり理解することで一つのヒントが見えてくるのではと思いました。ベンダー側としては、使いやすく、分かりやすく、導入側が困らないものを提供しないといけないですし、ベンダーとして補っていく必要があると改めて痛感しました。人材確保という点でも、特別な人材を雇う必要があるのか?という齋藤社長の投げかけは今回の座談会の大きなポイントになるのではと思います。」
石村さん 「人材の確保、育成、そして育成に紐づくDXプロジェクトがあると思います。確保については企業規模によりバランスはあるものの新規での採用、既存からの登用、外部のリソース活用などがありますが、育成については先ほど仁木さんがお話しされていたように精度もあればそもそもどの人材のどのスキルを活かすか、業務理解やITリテラシーなのか、横断的な理解力なのか、ただこれもすべてが必要なわけではないというのは理解できました。DX化においてはPDCAで回してくこともあれば、山本さんがお話しされていたように企業規模によってはそんなに専門性が必要ないこともあるので、たとえば一部を会計士にお願いすればそもそもその業務をなくすことができたり、やはり会社としてフォーカスする課題と業務領域に応じた専門性のレベル感が違えば新規採用する必要はなく一部を外部の士業の方にお願いすれば解決できることもあるので、業務の優先度レベル管理が違うのかなと思いました。」
石村さん 「業務の観点、システムの観点の2つの質問をさせていただきました。 業務という観点ですと、電子契約などがお話としてよく挙がりますが、完全電子化できないといった回答が56%、ペーパーレス化が進まずリモートワークができないなども挙げられていました。 続いてシステム観点では顕著に“やや当てはまる/とても当てはまる”が多かったのですが、実際に導入しても費用対効果が出るのかが不安、費用だけかかり連携ができるのか、選定に迷うといった回答があります。また年々システムの投資コストが増加しているといったものが挙げられます。たとえば賃貸管理業における売上、販管費があり、販管費率、人件費率等がありますが、ITに対するIT化率というのはまだ出ていません。ITに対しどのくらいかけるのが経営的に良いのかというのがまだIT化が進んでいるこの3年くらいでは出ていないのですが、今後はそれについても見ていくべきだなと個人的には思っております。」
森田さん 「各社様おそらく基幹システムを導入し、それに付随するITツールを連携させているのではないかと思いますが、もともとの基幹システムが提供している他の付随サービスと、他の良いなと思うサービスが競合他社のものといったこともあり、そうなると進めにくいという状況が起きています。現状、基幹システムが提供しているサービスについては、導入やリリース前に話を聞き実際のテストユーザーとして弊社に寄った形で意見をだしています。もう一点課題感があるのは、ITサービスの会社、もちろん会社や担当によっても異なりますが、どうしてもレスポンスが遅いというのがあります。ベンダー側も業務効率化が進む中で、弊社が求めるスピードでの回答がなかったりレスポンスが遅いというのが問題になっており、まさに今困っているところです。」
仁木さん 「人事的なお話となりますが、弊社はトライすることで称賛される風土がなく、朝日不動産さんのお話など聞いて羨ましいなと感じました。トライして失敗しても“ナイストライ!”と言ってもらえるような風土があれば、システムや業務改革に対してももっと前向きな行動変化が生まれるのではないかなと、そこの課題感を感じています。日常業務の忙しさから脱却させる点については、まさに今日から業務棚卸会議を行う予定なのですが、どんどんメスを入れて改善していき空き時間を確保することで新たなことへのトライができる組織風土を実現させるべく取り組んでいきます。」
山本さん 「私は特に困っていることはないと回答したのですが、なぜかというと私は導入までのところにものすごくこだわりがあり、中でも一番大事にしているところは人の部分で、ここでいう人とはベンダー側のことになります。システムの良し悪しでは検討せず、この人は信用できるか、仲良くなれるか、一緒に仕事がしたいかというのをすごく重視しています。システムの良し悪しももちろん大事ではあるのですが、それよりもそのシステムを提供している人たちと社員たちは仲良く一緒に仕事ができるかというのを気にしています。この人となら一緒に仕事がしたいと思えた人であれば、多少課題や不満があってもお互いとても頑張れるからです。うちの規模感だからこそできるというのはもちろんありますが、やはり人として信用できる、仲良くなれた人とはたとえ夜遅くになっても嫌な気持ちにはならず対応もできますが、そうではない人とはできないですし、そういったことを今まで経験してきているので、DXの話ではあるのですが、人情というのが成功のキーポイントになっているなと思っています。ですので困っていることはないという回答をいたしました。実際はあると思うのですがそれも含めて楽しんでできているので、弊社がやろうとしているDXはうまくまわっていっている、うちらしいDXなのかなと考えています。」
齋藤さん 「導入段階で成否が分かれると思っています。あるツールを見てこれすごいな、早速使いたいなと思って導入したものは、ツールの性能そのものにこちらが興味を示しただけなので、まぁ失敗することが多いですね。それを何回か繰り返したので、これではダメだなと思い、先ず業務フローを書き出すことを行ないました。例えば書類などもどんなものがどんな順番で誰のところを動いているかなどを書き出したところ、なかなか大変だということが分かりました。要領が悪いところにどんなツールをあてはめたら良くなるのかということを前提に考えるようになってからは失敗しなくなりました。このツールが良いよりも、どの工程の効率が悪いのか、誰が大変なのかを見つけたり、無駄に重複している部分をカットしたり、ということを先ず行っています。ツールありきの解決ではないかなと思います。とあるコンサルタントの方に業務を見てもらった際、そんなに負担の大きくない業務に対してRPAを勧められたのですが、それは違うなと感じたことがありました。すべての業務を繋げる必要も、繋げるために悩む必要もないということを学びましたね。仕事をするためのツールと、集計分析をして次の行動のヒントを得るためのツールは違いますし目的も異なるので、一回入力した項目は全部に使えないと損、みたいなことは言わなくてもいいのではと思っています。このツールはここで使えたら充分、少しずつ良くできればいいと思っているくらいがちょうどいいのではと考えています。先ずは明らかに面倒な手順がどこにあるのか探すという目的で業務フローの洗い出しを細かく行っていくと、ツールやシステムを導入したはいいが動いていない、ということはなくなると思います。ただ、できないから使わないのではなく以前のやり方の方が安心する、真面目だからこそ自分で確認したいなどの理由で使わないことはあります。それは仕組みだけでは解決できないですし、一人一人にテーマがなければ浸透しない、右に行っていたのを急に左には振り切れないというのは痛感しながらも、大事なのは徹底すること、100%使わないと効果出ないよ、ということにチャレンジしているところです。」
小谷さん 「皆さんのお話を聞いていて、当てはまることがたくさんあり、弊社と比較しても勉強になる部分があると感じました。社内的にはこのシステムという点でいうと、管理に重きを置くのであればやはり基幹システムとの連携が一気通貫にいければ良いんだろうなという理想はありますが、正直ここがうまくっていないんだろうなと思っています。これについては、業界のスピード感というのがあって、お客様のニーズに合わせた業界の変化と、そのスピード、それから特にコロナ禍になってからの法改正も多く、それらに順応していくためにも、コンプライアンス観点という重要な課題がありますので、それら2つの課題に合わせていく、標準化していくための業務でもあるのかなと思っています。基幹システムという面では、RPAやOCR、場合によってはアウトソーシングの位置づけの中で業務をうまく行っていかなければいけない、ただあまりにシステムやアプリを入れてしまうと重複している機能もどうしてもあるのと、じゃあ使いきれているかというとそうではないので、いずれは交通整理が必要だなと思っています。経営者としてまだまだだなと感じますが、マニュアル化がまだまだできていないなと思っていて、結局人に聞かないといけない部分もあり、ここに今現状では課題を感じています。」
鈴木さん 「業務の棚卸はやはりすごく大事だなと思っています。私も中間管理職として提案したことがありますが、現場への負荷が大きいので保留になったこともあるので、ここについてはトップからやると言ってくれると非常に動きやすいですし、間にいる立場として旗振りもしやすいなと思いました。またベンダーへの信用やシンパシーという部分でも、絶対に欠けてはいけないなと感じました。法改正の話では、仲介の現場で行くとたとえばSNSで広告を出すことが本当に今の法律や公正取引規約にのっとっているのか等を考えることも重要で、これをしていかないとシステムの合理化もできないのでこの辺りの情報をいかにキャッチアップしていくか、会員の皆さまへどのようにフィードバックしていくのかを研究したいなと感じました。」
花畑さん 「ベンダーとしては機能が使えているかどうかのフォローや課題の解決に向かって進んでいくというのがまだまだ足りていないなと感じます。ITを使って解決するのではなく、やはりそれを使うのは人なので、その使う人を重要視して我々もサポート・フォローしていかないといけないなと強く感じました。」
石村さん 「資料の一番手前の部分が事前準備の部分ですね。先ず業務の棚卸、何手かかっているのか?やるべき仕事なのか?を見るべきだということ、かつそれをシステムで解決しようと思うならば、基幹システムで試しているが開発要望を出しても返ってこない、改修されない、そもそもそこの会社の人と一緒に仕事がしたいのか?ということに繋がると思います。 今のサービスは基本的にSaaS型なので、納品されて終わりではなく継続して利活用していくものなので、ずっと共にするワンチームと考えたときに信用できるか人材かどうかというのは提供側としてあると思います。そしてやはりキャッチアップしていかないといけないのが法改正です。この1年半でも色々と変わって細かくレギュレーションが変わっていくところを理解しないままでは業務棚卸もできないですし、システムの基本機能も見えないのでそこはきちんと紐づくのかなと思いました。その基本機能があったうえで連携の部分についてはこれから先の話なのかなと感じました。」
齋藤さん 「評価項目を点数化する際に難易度が調整しづらいなというのはありますよね。営業であれば何件獲得したか、売上がどうか、となりますが、その営業が動けるようにバックヤードで動いたものを成果を金額換算するのは難しい。何時間削減したという成果は一見すごいように見えますが、営業現場に効率が上がったという実感が無いとMVPとして推しづらくなってしまう。バックオフィスの整備で営業側に良い効果は出ているはずだが、その成果を数字で表現できてないというのが悩みです。そういったところもうまくツールが効果を計測してくれて、事務方の自己申告を元にする「何時間削減した、いやそんなに楽になってない」といった議論に終止符を打てればなと思っています。ツールに期待する部分ですね。この辺りはまだ私も悩んでいるところです。」
石村さん 「新たな課題のテーマができましたね。効果測定と評価指標および制度について、こちらはまた今後考えていければと思います。」
鈴木さん 「裏方が損しないようにですよね。」
齋藤さん 「そうなんですよね。難易度が違うのですが事務方が連携して行ってくれていたのが実はすごくて影のMVPで、こちらとしては分かっていても営業現場の人にそう思わせられないというのがもどかしい点で、社長が気合入っているから得してるな、というような捉えられ方では説得力がないので、そのあたりの経済効果をしっかり示したいなとほのかな希望を抱いています。」
約1時間半という短い時間の中で色々とお話が出来ました。本当はもっと深掘りしたお話をお伺いしたかったのですが、繁忙期のため、課題を残しつつの座談会になりました。しかし、経営者と中間管理職というそれぞれの立場の意見交換を行えたことで多くの気付きを得ることが出来ました。
経営者がDX化で実現できる未来像(=目的)を共有しないと、現場が追従し難いのではないかということが伺い知れました。そしてDX化を目指していく中で、活躍させるための環境整備や人材育成、人材育成といっても企業ごとに求めるレベル感は違うので画一的指標は無く、ゼネラリストとしての能力とスペシャリストとしての能力が求められるそれぞれのシチュエーションがありそうだということが分かりました。
ただ各社で求められる人材像を洗い出すには、共通のキーワード「業務棚卸」が鍵になりそうです。
各社における業務を一つ一つ分解して精査することで、そもそもDX化やアウトソーシングで「無くすことが出来そうな業務」と人に依存する「無くしてはならない業務」を明確化させることが必要です。そうすることでトップダウンで意思決定すべきことと現場の課題と現場で解決すべきことが浮き彫りになってくるのではないかと思いました。
また数字で評価されにくいDX化に貢献したバックオフィスで働く影の立役者を評価する仕組み作りもこれからの会社経営においては重要になりそうです。
私たち「ITソリューションワーキンググループ」は、「DX人材育成支援ワーキンググループ」と名称を変え、DX化で得られるメリットと会員企業各社で求められるDX人材のスキルアップに向けて研究と情報提供に努めて参ります。
引き続き、ITシェアリング推進事業者協議会の活動にご協力をお願い申し上げます。