意見交流会

意見交流会 高齢者編
開催日:2月18日(金)10:30~12:00

参加者

■あんしん居住研究会
太田垣 章子 様
OAG司法書士法人
代表司法書士
太田垣 章子 様
■管理・仲介
前場 俊輔 様
株式会社不動産プラザ(広島)
代表取締役
前場 俊輔 様
古谷田 晃生 様
株式会社ジェイエーアメニティーハウス(神奈川)
取締役 賃貸管理部部長
古谷田 晃生 様
鈴木 伸哉 様
株式会社ニッショー(愛知・岐阜・三重)
営業戦略室 室長
鈴木 伸哉 様(NNWG部会長)
■ニューノーマルワーキンググループ
八久保 誠子 様
LIFULL LIFULL HOME'S PRESS
編集長
八久保 誠子 様(NNWGメンバー)
十河 浩一 様
日本管理センター
常務執行役員
十河 浩一 様(シェアリング分科会長)
■進行
石村 裕樹
WealthPark株式会社
執行役員
石村 裕樹(NNWG副部会長)

目次

  1. 高齢者の住まいについてのマーケット動向を教えてください。
  2. 各社様の取り組みや状況についてお聞かせください。
  3. みなさんそれぞれお聞きしたいことなどあればお聞かせください。
  4. 高齢者の住まいの現状について、太田垣先生お願いいたします。
―― まずは高齢者の住まいについて、マーケット動向を教えてください。

八久保さん 弊社グループの住まいの窓口、ライフル介護に高齢者の住まいについてヒアリングしました。現在高齢者の人口比率は29.1%、2040年には35%になると予測されています。日本は主要国の中でもダントツで、他の主要国が迎えたことのないような超高齢社会になっていきます。単身世帯化の加速が高齢者含めて進んでおり、昭和61年には子どもと同居している方が割合的には多かったのですが、平成22年には半数を割っています。
もともと高齢者は特養※というイメージがありましたが、介護保険法により、介護付き有料老人ホームなどには入居定員に対する必要な職員配置数の基準が定められており、入居者3人に対し1人の介護職員または看護職員を配置しなくてはなりません。またその介護体制から病院の意味合いも強いようです。現在待機者は30万人にものぼるとされています。
介護付き有料老人ホームについても同様です。
※特養・・・特別養護老人ホーム
一方で近年ではサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)への参入企業が増えており、一般高齢者住宅との差別化があいまいになってきています。管轄の官庁が異なり、補助金も出るので参入する中堅大手企業が増えているようです。看取りまで行ったり、リノベーション物件を活かしたサ高住が増えています。
認知症、単身や生活保護を受けている場合などでも借りられるかなどの相談が多く、高齢×賃貸×相談だと、高齢でも借りられるかという内容が多いのですがそのうち4割はほかにも別の不利な条件も絡んでいます。老後というワードだと賃貸ではなく購入の相談が多い印象です。

―― 各社様の取り組みや状況についてお聞かせください。

前場さん 高齢者の住まいについて、そんな特別なことをしているわけではないのですが・・・東広島市は若い世代の人口も増えており、高齢者はそこまで多くないのが現状です。比率としては20%くらいですね。高齢者は持ち家の方が多く、賃貸が増えているわけではない印象です。2021年だと370件中11件でした。内訳は11件中6件がファミリー、ほか5件は見守りサービスを利用した高齢者ですが、基本元気な方ですね。高齢者対策は特別に講じていないのですが、65歳以上で単身の場合は見守りサービスをつけてもらっています。高齢者だからと断られるケースは少なく、また孤独死についてもそんなに心配はしていないですが、身寄りのない単身の方の住み替えなどついてはカバーできていないのが現状です。

古谷田さん 同じく特別なことはしていないのですが、サ高住の制度ができる前の高優賃(高齢者向け優良賃貸住宅)を4棟持っており、そちらについては問題なく管理できています。反響はすごくありますね。昼間は管理人室にシルバー人材センターから派遣された管理人の方がいますし、夜間でも緊急事態に対応出来るようにトイレの水が一定時間流れなかったら通報が送られたり、他にも鍵を入れる箱で入居者の動きが分かるようなサービスを入れています。県や市から家賃の補助も出るので人気です。高優賃以外に管理している一般賃貸住宅においても高齢者だからといって断らないようにはしていますが、審査としては親族の方が近くに住んでいる、連絡が取れることを条件にはしています。当社管理物件全体で65歳以上の方は年間で50~80人ほどで、高優賃は一度入ると亡くなるまで入居という形が多いです。見守りサービスは今まで導入していなかったのですが、そろそろ始めないといけないということで準備している段階です。一般住宅の高齢者対策はこれからですね。

鈴木さん 当社は見守りサービスを導入しています。2012~13年の時点で、ライフルさんが出されたようなデータが出ていたので、割合として伸びてくるのではと予測していました。ニッショーシニアライフサポートは2014年から運用をはじめましたが、直近4年のデータではあまり数字に変化がなくどんな状況になっていくのかはなかなか読めていないのが現状です。見守りサービスをつけることがハードルになっているのかなと感じています。直近4年のデータだと、65歳以上の契約980件中、見守りサービスをつけているのが8%、夫婦を含めた70歳以上の契約519件中、サービス利用は14%、70歳以上の単身者契約300件中だとサービス利用は61件で20%くらいでしたが、年次ごとでそんなに変わらない印象です。一方で70歳以上の単身の方は微増していますね。身寄りのない単身の方はお断りしているのですが、というのも8年サービスをやっている中でトラブルが多く、やはり家族でないと緊急時に連絡しても対応してもらえなかったりということがありました。なのであるとき条件を外したのですが、これについては是非太田垣先生に解決策など聞きたいですね。認知症になられた方などを施設に案内したり、入居者の入居後の変化に対する対応は管理会社として課題だと思っています。そのあたりも是非みなさんにお聞きしたいです。

―― みなさんそれぞれお聞きしたいことなどあればお聞かせください。

十河さん 一般の賃貸住宅は、1階部分や駐車場が付いてない物件が不人気であったりしますが、その点は高齢者の方々にはあまり関係がないのか、とも思えます。ただ、一方で仲介担当者の方々は「高齢者の方は”話が長い”」というご苦労もお聞きします。そこで是非みなさんに募集や接客場面での話を聞きたいですね。見守りサービスについても、こういうところをリスクヘッジしたほうがいい、押さえておいたほうがいいポイント(付帯サービス、条件等)などのアドバイスをお伺いできればと思います。

八久保さん 高齢者向け住宅の平均家賃設定が知りたいです。

鈴木さん 入居者の方が認知症になってしまった場合、施設に促さないといけないなどあると思いますが、現状管理会社で対応しきれておらず、どういう誘導をしていけばいいのかなど、是非大田垣先生にお聞きしたいです。

前場さん 長期で入居されている方で身寄りのない方が亡くなってしまった場合など、将来的に必要な備えや対応についてお聞きしたいです。大家さんも不安に感じている部分だと思うので。

古谷田さん 賃貸住宅における高齢者住宅の割合がどれくらいなのか知りたいですね。

鈴木さん サービスを始めて8年経つので、毎年新入社員には研修を行なっています。現場の抵抗感もなくなってきて、高齢者対応にも慣れてきた分、心配になるケースもありますね。特に今はコロナで研修ができず、対応力の低下が心配です。もともと、高齢者には広い間取りが人気あったのですが、最近の傾向として家賃にかけられる金額が下がったのか、厳しくなってきています。相場としては、ワンルーム・1DK4万、2K~2DK5万円、3DK5.5万円という感じです。

前場さん 接客時のポイントについて、特に何か気を付けているということはないのですが…入居申し込みが電子申し込みなのでそのあたりのフォローは手厚くしています。家賃に関しては市場家賃と変わらないですね。ただ以前はしっかりした分譲マンションに住んでいるケースも多かったのですが、3万円くらいの物件に一人で住むケースが増えています。

古谷田さん 当社も特殊なことはしていないです。家賃は4~5万円で探されている方が多いですが、当社管理物件全体の平均家賃が8万円なのでなかなか入居に繋がらないのが現状です。また高優賃は電話の反響も多いのですが、電話対応が長くなってしまうのが課題ですね。家族含めて説明を行っていますが、そうすると身寄りのない方は漏れてしまいます。

十河さん お話を聞いていると、家族での利用が多く、またITリテラシーの低い方は残ってしまう印象ですね。高齢者対策について、一般賃貸では取り組んでいなかったのでやっていかないといけないと感じました。

―― 高齢者の住まいの現状について、太田垣先生お願いいたします。

太田垣さん 近年、見守りサービスはいろいろと広がっています。某大手さんのホームセキュリティシステムや電気(電灯)の「点いたり」「消えたり」で見守るものなど、各社さん持ってこられるのですが、いち司法書士の立場でいうと、大きな課題は別にあると思っています。万が一亡くなった場合に契約の解約は誰がするのか?ということです。
今の高齢者予備軍が高齢者になったとき、今までと質は変わってくると思います。今の高齢者は他人に迷惑かけたくないという思いが強く、高度成長を生き抜いてきてお金に余裕もあり、家族の協力が得られる人が多い世代です。一方でコロナの影響もあり、50代、60代など破産予備軍と言われていますが、高齢者になったときにお金がない、そういった世代が増えてきます。日本は家族ありきで制度設計されているので、お一人様が増え、家族を頼れない時代が見えてきている中で、家族のサポートを求めていると立ち行かなくなる時代が来ると思っています。
昨年、法務省と国交省が契約の解約と残置物処分については死後事務委任を使っていいとアナウンスしましたが、それはつまりそれ以外の対応を認めないということだと思います。事故物件にしないという意味では見守りサービスも重要だと思いますが、むしろ死後事務委任のほうが大事なのではないかと考えています。
長年管理会社を見てきていますが、管理会社そのものが変わってきているなという印象があります。人手不足によりいろんなことがシステム化され、家賃保証やクレーム対応なども外部委託によりノウハウが蓄積されなくなってしまっています。
高齢者対応については、入居して終わりにはできない問題です。みなさん心配されていたような入居後に認知症になるケースなど、管理会社だけでの対応は難しいと思います。日本は縦割り行政ですが、管理会社と地域包括支援センターが横に繋がってもっと協力していかないといけないのではないでしょうか。
私の希望としてはシステム化できる部分はシステム化して、やはりトラブルはコミュニケーション不足から生まれてくるものだと思うので、高齢者とのコミュニケーションをしっかり取りいち早く認知症の兆候を見つけて行政と繋いでいくなどのノウハウをためる必要があると思います。
死後事務委任に対応する会社を設立したのですが、そこでは認知症を見極めるために毎週SMSでアンケートを取り、回答結果(正誤)を見ています。それによって認知症かどうかなどの判断材料にしています。アラートを受ける家族がいない人を対象にしているので、私たちが受けるためスタッフは大変ですが年末年始などでも対応しています。
認知症の対応までは管理会社はせず、ただそこで地域包括支援センターと繋いだりといったルートを固めることが重要だと思います。また、認知症を疑う際いちばん最初に気づくのは家賃滞納ではないかと思っています。ポイントとしては、高齢者の方は自動引き落としにしないほうがいいです。家賃を引き落とせている限り、トラブルのない入居者なので何かあっても気づけないケースもあります。認知症が始まると、まずお金に執着しだすので家賃未納などは気づくポイントになります。完全認知症になってしまうと後見手続きなどその後の対応が大変なので、道徳的な課題はあると思いますが家賃滞納の時点で退去対応するなど行政にお願いするなどの対策を講じるのがいいのではと思います。
死後事務委任契約に関しては、当社で作成した、家族がいない前提での契約書や重説はオーナーさんからの引き合いも多く、利用件数も伸びているのが現状です。
8050問題もありますが、地域の管理会社と地域行政とのコミュニケーションが重要になってくると思っています。ただし個人情報保護法の壁があるので、当社では死後事務委任を利用する場合は情報連携について同意をもらっています。法的な課題などもありますが、うまく繋がって業界で事例が作っていけたらいいなと思っています。

十河さん もっと高齢者のことを知りなさいということですね。管理会社は物件のことについては詳しいですが、そこに住まう高齢者のことについては、ケアマネージャーだったり、介護会社、医療や行政、地域包括支援センターなどとの連携が必要ですね。そこと連携して初めて管理会社の高齢者対策ができてくるのかなと思います。余談ですが、今の高齢者と自分たちが高齢者になったときは違うというのはとても刺さりました。当社でもサ高住を手がけていますが、20年後に入居する方と手すりの高さも違うという話もありましたね。

太田垣さん 低めの家賃が求められているのも、年金受給額なども影響しています。私たちが高齢者になるときには、もっとお金もなく家族との関係も希薄になってきているので、身内の…などと言っていると、若い世代ですら身内もいない人も増えているので言っていられなくなるかなと思います。

古谷田さん これからの高齢者対策として、死後事務委任の内容も契約書に入れていこうと考えています。また月1回訪問してくれる会社と提携し、高齢者と会話してもらうサービスの導入も始めていく予定です。ただ費用が家賃に上乗せされるので、65歳以上は必須にしていいものか悩んでいるところですが、事故防止や認知症の早期発見などに繋げるようにやっていかないといけないなと思っています。管理物件からはじめて他社の物件でもはじめていけたらと思います。

鈴木さん 現状では毎日の安否確認電話をしています。太田垣先生がおっしゃっていたようなクイズではないですが、これに応えられないと怪しい、といったコミュニケーションを取ることは大事かなと思います。

太田垣さん 是非有料のセミナーに呼んでください(笑)依頼も増えています。

八久保さん お墓もそうですし、お葬式をしない方も増えているので家族とのつながりが薄くなっているなと感じます。

太田垣さん まさにそうですね。家族葬や直葬はコロナの影響もあって加速しています。そうなると余計家族との関係が希薄になってくるので、そこが本来管理会社が困ることだと思います。あとはいかに風呂場での事故をなくしていくかですね。デイサービスとの連携も重要です。

八久保さん 賃貸住宅に対する高齢入居者の割合については、国交省が出している公営住宅のデータによると60歳以上が平成20年ですでに40%超えています。一般住宅でも言えるかなと思います。

十河さん 今日のディスカッションが日管協の会員の方が取り組むきっかけになったらいいと思います。高齢者に対して取り組まないというのは、管理会社にとっても家主さんにとっても不利益になってしまいます。ただ中途半端な対応はできないのでしっかり知っておかないといけないと思います。

太田垣さん 孤独死が多いのは50代、60代の現役世代ですが、長期間住んでもらえるメリットもあります。管理会社の中でいかにノウハウを蓄積できるかが重要ではないかと思います。もちろん元気な高齢者も多いので、そういった方々にいかに動いてもらって、それを管理会社がハンドリングできるかということも大事になってきますね。いまの弊害は国や行政の縦割りであることなので、横といかに繋がれるかで管理会社が生き残っていけるかということに繋がってくると思います。対応を外部に出してしまうとノウハウも習得できないので、やはり現場に行かないとわからないことも多いです。

十河さん 我々管理会社は、一般賃貸住宅の特性や運用管理・建物管理には詳しいですが、そこに高齢者の方々に住んでいただくにはあまりニーズを理解していない。それに詳しい介護業界の方々は、不動産のことはあまり詳しくない..この点で、賃貸住宅管理業界と介護業界が横で繋がって連携していくということですね。

八久保さん 高齢者だけでなく、これから単身が増える日本の社会においては発信していくべき課題だと思います。外部とのコミュニケーションがついてくると、何かあったときに医療と繋がったりもできますよね。「訪問医療や郵便、宅配便など、訪問や配達システムの仕組みをうまく活用できるといいなと思います」ITを駆使して繋がるのもありですね。

―― みなさん、貴重なお話をありがとうございました。まだまだ深いテーマなので、また是非機会を設けられたらと思います。

PICK UP

日管協 公式SNS

PAGE TOP