【国土交通省】災害により影響を受けている下請中小企業との取引について
この度、国土交通省より、暴風雨及び豪雨による災害により影響を受けている下請中小企業との取引に関する配慮について案内がありましたので、会員の皆さまにお知らせいたします。
【国土交通省からの案内】
令和四年九月十七日から同月二十四日までの間の暴風雨及び豪雨による災害によって、宮崎県地域等において、交通インフラや建物・設備の損害が確認されました。
当該暴風雨及び豪雨の発生に伴う取引上の影響は、被災地域と取引のある全国の親事業者、下請事業者に広がる可能性があります。
過去の大規模災害発生時においても、下請事業者からは、事業者の責任によらない受領拒否、返品、支払遅延等に関する相談や、従来の取引先から発注が受けられなくなったといった相談が寄せられたところです。
1.親事業者においては、今回の暴風雨及び豪雨の発生を理由として、下請事業者に一方的に負担を押しつけることがないよう、十分に留意すること
2.親事業者においては、今回の暴風雨及び豪雨によって影響を受けた下請事業者が、事業活動を維持し、又は今後再開させる場合に、できる限り従来の取引関係を継続し、あるいは優先的に発注を行うよう配慮すること
(参考)
災害発生時における、受領拒否や返品など取引上の問題に対する、独占禁止法注1及び下請法注2における考え方について、公正取引委員会が東日本大震災時に取りまとめておりますので以下をご参照ください。
Q1
震災後、生活物資等の流通が滞っていることに伴い、商品等の販売価格が上昇しているようですが、独占禁止法上の問題はないですか。
A1
今次の震災により、東北・関東地区における生産活動及び物流機能が大きな被害を受け、生活必需品を含め物資の供給に支障が生じています。今後、こうした事態に便乗して生活必需品等の物資に関して価格カルテル等の独占禁止法違反行為による不当な価格引上げが行われることがあれば問題となりますので、公正取引委員会としては、そのような行為がないかどうか監視してまいります。
Q2
今次の震災による物資の不足を受けて、事業者が共同して又は事業者団体が、顧客1人当たりの販売個数を調整したり決定したりすることは、独占禁止法上問題となりますか。
A2
被災地に優先的に物資が供給されるようにする、顧客に物資が広く行き渡るようにするといった緊急の対応として専ら行われるものであって、物資の不足が深刻な期間及び地域において実施されるものであれば、独占禁止法上問題となるものではありません。一方、そのような調整を、著しい物資の不足が解消された後になっても続ける場合には、独占禁止法上の問題が生じますので、御注意ください。
Q3
大規模小売業者が、納入業者に対して、被災したスーパーの原状回復や再陳列作業への協力を要請することは、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となりますか。
A3
被災者の生活の糧を供給する拠点となる大規模小売業者の営業が迅速に開始されることは、被災地の復興や被災者の生活支援にも資するものであり、大規模小売業者と納入業者との間で協議が行われた結果、被災した大規模小売業者の原状回復や再陳列作業への協力を行うことになったとしても、独占禁止法上問題となるものではありません。
しかしながら、震災を口実として大規模小売業者が納入業者に対し、不当に不利益を与えることとなるような場合には、独占禁止法上の問題が生じ得ますので、御注意ください。
Q4
親事業者が被災し、工場等が滅失するなどして親事業者に受領能力がないことを理由に、受領拒否することは下請法上問題となりますか。
A4
下請事業者に責任がある場合を除き、受領拒否をすることは、下請法上問題となりますので、代替的な工場での受領の可能性も含め、親事業者は可能な限り受領する手段を講ずる必要があります。
しかしながら、親事業者が被災し、工場等が滅失するなどして、客観的にみて当初定めた納期に受領することが不可能であると認められる場合に、例えば、両者間で十分協議の上、相当期間納期を延ばすこととなったときには、そのような事情を十分考慮して対応することとなります。
なお、親事業者は、このような特別な事情や経緯について、事後的にも分かるような記録を残しておくことが望まれます。
Q5
仕事を失った被災者を地域でなるべく多く従業員として受け入れたい。その際、関係事業者が共同して、又は事業者団体が、賃金、労働時間等について調整したり決定することは、独占禁止法上問題となりますか。
A5
被災者をどのような条件で雇用するかという雇用契約上の問題ですので、労働関係法令上の考慮の必要性は別として、独占禁止法上は問題となるものではありません。
Q6
親事業者が、風評に基づき受領拒否や返品を行うことは、下請法上問題ないですか。
A6
下請事業者に責任がある場合を除き、親事業者が、発注した商品の受領を拒むことや一旦受領した後にその商品を引き取らせることは、下請法上問題となります。
個別の事案については、具体的な事実を踏まえて判断することになりますが、例えば、震災の被害を受けた原子力発電所の所在する県と同一の県に下請事業者が所在することを専らの理由として、親事業者が下請事業者の納入した商品の受領を拒むこと又は一旦商品を受領した後にその商品を引き取らせることは、下請法違反となるおそれがありますので御注意ください。
Q7
自社の工場が被災し、操業開始のめどが立っていない。また、製品の在庫も尽きつつある。
顧客への供給を確保するため、当該製品を生産している競争事業者に自社に代わって顧客に供給してもらったり、生産を委託したりすることは、独占禁止法上問題となりますか。
A7
被災によって自社の供給能力が喪失又は減少した場合に、自社の供給能力が復旧するまでの間、顧客への供給を確保するために必要な範囲で、競争事業者に代替供給を行ってもらうことや生産委託を行うことは、独占禁止法上問題となるものではありません。
ただし、代替供給等を契機に、複数の事業者間で相互に価格や供給量等について制限することは問題となりますので、御注意ください。
Q8
震災の影響により、下請事業者が親事業者から預かっていた物品が破損したことを理由として、親事業者が損害賠償請求として金銭を下請代金から差し引くことは、下請法上問題となりますか。
A8
親事業者が、下請事業者に責任がないのに、下請代金の減額を行うことは、下請法上問題となります。
したがって、震災の影響により親事業者から預かっていた物品が破損したとしても、通常、下請事業者に責任があるとはいえず、親事業者が震災による損害額を下請代金から減額することは、下請法上問題となるおそれがありますので御注意ください。
Q9
親事業者は部品 A と部品 B によって商品 C を製造しており、部品 B については下請事業者に製造を発注している場合、被災により部品Aが手に入らなくなったことを理由に、下請事業者に発注していた部品 Bの受領を拒否することは、下請法上問題となりますか。
A9
個別の事案については、具体的な事実を踏まえて判断することとなりますが、下請事業者に責任がある場合を除き、受領拒否をすることは、下請法上問題となりますので御注意ください。
Q10
親事業者の保管施設が被災したことにより、下請事業者が納品しようとした商品をその下請事業者に保管させ、倉庫代等の追加費用が発生した場合、当該費用を下請事業者に負担をさせることは、下請法上問題となりますか。
A10
下請事業者に対し、親事業者が支払うべき費用を負担させることは、不当な経済上の利益提供要請として下請法上問題となりますので、親事業者が追加費用を負担する必要があります。
しかしながら、親事業者が被災し、客観的にみて震災の影響により発生した追加費用を直ちに負担することが不可能であると認められる場合に、例えば、両者間で十分協議の上、一時的に下請事業者が費用の一部を負担するときは、そのような事情を十分考慮して対応することとなります。
なお、親事業者は、このような特別な事情や経緯について、事後的にも分かるような記録を残しておくことが望まれます。
Q11
震災の影響により生産・調達コストが大幅に上昇したため、下請事業者が単価引上げを求めたにもかかわらず、親事業者が従来の単価を据え置くことは下請法上問題となりますか。
A11
御指摘の生産・調達コストが大幅に上昇するなど震災の影響による単価の引上げについては、親事業者と下請事業者との間で十分協議を行って決定することが望まれます。
個別の事案については、具体的な事実を踏まえて判断することとなりますが、例えば、震災の影響により下請事業者のコストが通常の発注に比べて大幅に増加するような発注にもかかわらず、下請事業者と十分に協議することなく、通常の発注をした場合の単価と同一の単価に一方的に据え置くことは、買いたたきとして下請法上問題となるおそれがありますので御注意ください。
【引用・東日本大震災に関連する Q&A(公正取引委員会ホームページ)】
https://www.jftc.go.jp/soudan/shinsaikanren/23jishinqa.html
以 上