取組事例インタビュー

地域の足、鉄道会社ならではの対応と人材配置
― 店舗のあり方、適正な数、営業形態を模索 ー

管理戸数119万戸の巨人
遠州鉄道株式会社(静岡県)
不動産事業部 アセットマネジメント課 鈴木拓也さん
取材日:2021年3月19日
遠州鉄道株式会社は、静岡県浜松市に本社を構える遠鉄グループの基幹企業で、鉄道事業を中心に、バスの運行、自動車整備、保険、そして不動産と幅広く事業を展開しています。グループ内には、観光産業、百貨店やスーパーマーケットの経営、建設事業などもあり、総合生活産業として地域の生活を支えています。
グループ全体の社員数は、約5360名。その中で、約120名の社員が不動産事業に従事し、そのうち53名が賃貸部門を担います。
賃貸住宅の管理戸数は、2021年3月時点で5200戸(事務所含む)。7つの仲介店舗を含む9つの拠点で、浜松市、湖西市、磐田市、掛川市、袋井市の賃貸住宅を仲介・管理しています。
賃貸部門を統括するのは、本社のアセットマネジメント課です。自己所有する300戸の居住用物件、複数のビルを運用・管理しながら、在籍する5名の社員が将来に向けた様々な戦略を練っています。同課に勤務する鈴木拓也さんに話を聞きました。
―― コロナ禍で行ったことを教えてください。

鈴木さん 2020年4月後半〜6月上旬にかけ、本社勤務のスタッフに関しては交代で在宅勤務を行いました。鉄道本体からテレワークを推奨する通達があったことも影響しています。人数が多い本社は急遽フロアを分け、人の配置も分散しました。仲介店舗については、お客様が来店されるということもあり通常通りで出社しました。

―― 仲介で新しく始めたことはありますか。

鈴木さんご来店不要のお部屋探しという特設ページを3月から3週間程度で立ち上げました。V R内見、オンライン内見、WEB申し込み、IT重説の手順をわかりやすく細かく作り、そうしたお客様の希望に応えました。地域柄転勤者の方も多く、オンライン内見は増えたと思います。機器は、社用携帯として配布したiPhoneのFaceTimeを使いました。
IT重説に関しては、コロナ以前から取り組んでいましたが、店舗ごとに取り組み頻度には違いがありました。IT重説は法令に則って行う必要があるため、本社で「マニュアル」と「業務フロー」を作り、店長経由で各店舗に展開した結果、1割未満の実施率だったのが、2割強に倍増しました。こちらも汎用性のある機器が喜ばれるためFaceTimeを利用し、iPhoneでないお客様であればZOOMで対応しました。

―― 管理業務についてはいかがでしょうか。
急遽、入居者アプリを推奨する対策を取りました。

鈴木さんやはり入居者様がご自宅にいらっしゃる時間が増えたことでコールセンターへの入電が増え、急遽、入居者アプリを推 奨する対策を取りました。特に昨年は、ゴールデンウィークなど長期の休みに入ると、クレームや修繕の問い合わせが例年より増えました。
コールセンターが繋がらないという事態を回避するため、既存の入居者にもアプリ(pocketpost)を活用いただくようDMを送り、新規の方には原則店頭でアプリを入れるようなフローを取り入れました。結果として、5000戸中100〜200戸だった登録を、1000戸まで増やすことができました。
アプリ経由にしてよかったことは、お客様に「行き先」を示せたことです。例えば解約ボタンを押すと、「ここから手続きをしてください」といった具合でwebサイトに誘導できたり、「設備関係の問い合わせであればここに電話してください」、「ここに写真を投稿してください」といった具合でたどり着いてほしいところへの誘導・指南ができました。

―― 不動産事業部は、遠州鉄道株式会社の一部門という位置づけですが、会社内での連携などはありましたか。

鈴木さん遠州鉄道では、路線バス以外に観光バスを運行させていますが、コロナ禍でツアー自体がなくなり、余剰人員が出てきました。そこで、コロナ禍の影響が比較的少ない他事業部、例えば不動産や保険、ストア部門などでこれらの人材を受け入れました。

相互の仕事を理解することが大切

不動産部では、バスガイドをしていた従業員4名を受け入れ、電話対応や大家さんへの送金業務、入居者からの電話対応、さらには簡易清掃といった業務を担ってもらいました。
こうした経験から、他事業部からの人材の受け入れや、同じ事業部でもジョブローテーションを行っていき相互の仕事を理解することが大切だと考えるようになりました。
そのためには、業務のマニュアル作りが必須です。しかしそれがあれば、新入社員の教育も楽になりますから、喫緊の課題として取り組んでいきたいと思っています。

―― そうした人材交流は、御社ならではの取り組みでしたね。他に今後の課題や取り組んでみたいことを教えてください。

鈴木さんIT重説に関しては、件数を増やしていく中でもっと工夫の余地があると考えるようになりました。というのも、土曜や日曜の日中にスケジューリングされると、営業的な効率化にはつながりません。
IT重説でやる以上は、夕方とか早朝に予約を入れていただくとか、事務的なスタッフを配置するなどしなければ、本当の業務効率には繋がりにくいと感じています。また、コロナを通じて強く感じていることは、今後の店舗運用のありかたについてです。

―― と言いますと?

鈴木さんコロナ禍では、来店予約の推奨も行ってきました。「予約がおすすめです」、というアナウンスをポータルサイトでも打ち出し、店頭にも「ご予約いただいてないお客様ですと対応できない場合がございます」と言った掲示を行い、密を避けるようにしました。
その結果、フラッと来店される方が減りました。
店舗については、存在そのものに固定費や運用コストがかかりますので、その数については妥当性や適正を検証していく必要があると感じています。

―― それは「店舗は今より減らせる」という考えですか。

鈴木さんその通りです。実は、コロナ以前より、実験的に浜松東店という店舗は完全予約専門店という形で運用をしてきました。繁忙期を通じて分かったことは、「完全予約制」によって仲介件数が減ることはなく、近隣店でカバーすることで取りこぼしも防ぐことができる、ということです。この経験から、今年1月、浜松東店は閉店の決断を下しました。
現在、湖西市 浜松市、磐田市、掛川市、袋井市に店舗がありますが、将来的には、人材を1カ所に集中し、予約の時だけサテライト店舗に出動する、という最小限の人数での運用も検討できるかと思っています。

予約の時だけサテライト店舗に出動する

また、現在のオンライン内見の運用は、スタッフが現地に行き、お客様はご自宅なりで待っていていただく、というものですが、これを逆にすることもできるかと思っています。つまり、お客様に現地に行っていただき、現地から質問してもらったり、何か対応を行ったりするというものです。
以前からこの考えはあり、スマートロックで入退室の履歴さえ取れたらお客様に自由に行っていただくことも可能になるかと思っていましたが、コロナによってより前向きにとりかかれると感じています。
ただ、そのためには弊社の管理戸数を増やすという課題もあるため、仲介の成長と合わせ、管理会社としての成長に重きをおいた戦略も必要だと感じています。

―― 管理戸数の目標は?

鈴木さんまずは、6000戸を目指していきたいと考えています。そのためには、グループの建設部門との連携が欠かせません。土地活用の提案の実績が乏しいため、ここを強化することで、築年数の浅い、良質な賃貸住宅の管理を増やしていきたいです。

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